教育・出版業の社内SEだった女性の体験談

性別
年齢 38歳
社内SE歴 3年半

持っている資格
IT関連資格はなし、TOEIC770点

働いている企業の業種
教育・出版

社内SEを目指していたわけではないんです

転職活動の際、履歴書と共に提出を求められる職務経歴書。
私の職務経歴書を見た人事担当者や転職エージェンシーに必ず言われるのが「社内SEもされたことがあるんですね!」です。

私は、古い言語ですけど、と言い添えることも忘れません。
面接や面談では、異なる職種を希望しているにもかかわらず、「どうしてSEとしてのキャリアを目指さなかったのか」、「なぜエンジニア職を探さないのか」、など聞かれます。

ですが、私の経歴にある『社内SE』は、そもそも私がなりたくてなったものではないので、それらの質問に答えられるわけなどないのです。

社内SEのスタートは営業の終わりから始まった

私が新卒採用で入社した会社では当時、新入社員は総合職採用で、まずは『営業』として各事業部に配属されていました。

社内では『事業部』と呼ばれていたのですが、外面的には販売会社として独立している、という少し複雑な会社です。
後に販売会社を完全子会社とし、販売管理を行うホールディングスが設立されることとなります。私も営業として働いていました。

最初は成績も良く実績はインセンティブとして給与に反映され、手ごたえとやりがいを感じていました。新卒にしては月収(約40万円)も高かった方だと思います。
ですが、営業の世界は容赦ありません。成績が下がればおいていかれます。

契約件数ゼロの日々が続き、入社して半年も経たないうちに、頭の中には『退職』の二文字が浮かんでいました。そんなときに、社内基幹システムを統括する部署から声をかけられたのです。
それが私の『社内SE』のスタートでした。

社内SEに理系も文系も関係ない

面談で採用理由を部長に尋ねたところ、「女性で理系出身者であること」でした。

だからといって、その時の私はプログラミングの経験もないどころかPC操作ですら危ういレベルです。その点も正直に話しましたが、部長は「ロジカルな思考を求めているので、現時点でのスキルは不要ですよ」と言い、私は晴れて管理部門にて採用(グループ内異動)となりました。

管理部門(後のホールディングス)に属する経理課、給与課、販売管理課、労務課では新卒採用を行っておらず、私のように営業から脱落した人、その中でも学歴が高い人が中途入社として採用されていました。私の配属先だった電算課ももれなく、です。

『課』ですが課長はおらず、部長1名、係長2名、主任1名、一般社員9名、そこに私が加わり計14名で構成されていました。主任と一般社員のうち1名が女性社員で、残りは男性社員。14名のうち8名が理系出身者。

ただ私は“理系・文系”はあまり関係ないと思います。
理系出身者のほうがロジカルに物事を考える傾向にあるというだけで、プログラミングスキルを身につけるという点においては本人のやる気次第です。

システム的にも物理的にも閉じられた環境

管理部門のネットワーク構成は巨大なイントラネットでした。
社員情報、顧客情報、販売情報など会社運営に関わるすべての情報を管理していたので、外部ネットワークとの接続は一切なし、すべて自社システム。インターネットを利用できるPCは労務課を除いて、課に1台が単体で存在しているのみです。

情報漏洩に関する危機管理は徹底していました。ホスト・コンピューターと専用端末の配線はすべて床下配線のため、レイアウト変更することもありません

他社での経験がないのでわかりかねますが、現在と比べるとかなり古典的なシステムだったと思います。だからこそ情報が守られていたとも言えます。
社屋は1階ワンフロアのみで課ごとの仕切りはありません。ですが、電算課だけがフロア内で区切られており、さらに奥に電算課の社員のみが持っているセキュリティカードでしか開けられないホスト・コンピュータールーム(空調完備)がありました。
管理部門の中でも別格で、他の課員に「相談事があっても入りづらい」と言われたこともあります。

やることが何もなかった1ヶ月

さて、私はと言えば、配属されてしばらくは何もすることがありませんでした
本当に何も、です。

「何かやることないですか?」と尋ねても「特に何も」という答えしか返ってきません。
読んでも仕方ないと言われるメーカーのホスト・コンピューターの仕様書を読んでみたり、COBOLで書かれたソースをドットインパクトプリンタで出力し勉強してみたり、なんとか実働8時間をやりくりしていたのですが、さすがに時間を持て余していました。
なぜこうもコミュニケーションを取らない課なのだろうか、と憤りすら感じていたのですが、よく考えると営業でうまくいかなかった人が集まった組織です。3ヶ月と持たなかった人がほとんどです。
取らないのではなく取るのが苦手な人たちなんだと理解してからは、先輩たちへのアプローチ方法を変えました。

「何かやることないですか?」ではなく「私にもできそうなことを教えてもらっていいですか?」と尋ねることにしたのです。
そこでようやく給与計算や決算処理のオペレーションを教えてもらえるようになりました。

社内SEに真に求められるスキルはコミュニケーション能力

社員情報や給与情報、販売情報は各課でデータ入力するのですが、締日や月末に行われる給与計算やデータ更新は電算課の仕事。指定年月日を入力し確認ボタンをクリックする。
それだけでグループ会社すべての情報が正常に処理されることに驚くとともに、一つ間違えれば大きなミスにつながるという緊張もありました。

12月に異動していたので、各課の業務の流れを理解するために、翌3月までは日次、月次、年次のオペレーションを率先して行っていました。
各課の専門性を深められなくとも、せめてどんな仕事をしていてどんなことが大変なのかをわかっておきたかったのです。他の課員が相談事を気兼ねなく相談してもらえるように、電算課内の雰囲気を良くできるように、次に入ってくる社員に仕事を教えられるように。

システムの開発・保守・運用はユーザーがいてこそ成り立つものです。サポート役として「どうしたら自社のビジネスをシステム的側面からよりサポートしていけるのか」を考え、提案してくことが社内SEの仕事だと思います。
プログラミングスキルや思考力と同じくらい想像力やコミュニケーション能力が求められると考えたからです。

プログラミングスキルは実践で身につけられる

一連のオペレーション内容を覚えた時点で、簡単なプログラム修正や変更を任せてもらうようになりました。

最初は、エラーがあればすぐさま動作をストップさせ、どこでエラーが出たのか一目でわかるようなプログラムを書いていました。使用言語はCOBOLです。先に述べたように、私にはプログラミングスキルはありませんでした。

大学でC言語の授業を取っていましたが、講義中に抜け出してしまうほどでした。それがなぜ書けるようになったのか。

一つひとつ先輩が隣について教えてくれたからです。特定の先輩だけでなく、手の空いていそうな先輩をつかまえてその人が書いたプログラムをその人自身に教えてもらうようにしました。

ソースコードには個性が出ます。誰でも保守・改善できるようわかりやすいソースコードを書く人もいれば、その人にしか理解できないソースコードもあります。
後者のようなソースコードで過去に使用していた古いプログラムを書き直したり、「AがBだったらCを表示させる」といった単純なプログラムを作ったり、それらをテスト環境で走らせることでスキルを身につけていきました。
同時にフローチャートの書き方も覚えていきました。

上流工程から手がけるやりがい

異動して1年半が経つころ、給与システムを大幅に改善するプロジェクトが立ち上がりました。
ホスト・コンピューターは変わりませんが、新システムの開発・導入と同じレベルの案件です。

その案件に係長(男性)と主任(女性)、私の3人が携わることになったのです。外部パートナーとの連携、現場のヒアリング、開発の進捗・工数管理……上流工程から手がける分、大変なことも多く、残業も増えていきました。
増えたといっても1日1~2時間ほどで、営業時代に比べるとほんのちょっとです。
やりがいも大きかったので苦になりませんでした。はっきりとした納品時期を覚えていないのですが、開発期間は半年ほどだったと思います。テスト環境で走らせエラーが出ないことを確認し、3連休の初日に本環境にリリースしました。それから1ヶ月ほどは何か不具合が起きないかと冷や冷やしながら過ごしていたことを覚えています。

ISMS取得という達成感とその後

給与システムの案件が終わった後、続いて主任と私とで管理部門内のISMS構築を担当することになりました。
これは本当に大変でした。
情報セキュリティ基本方針の作成、ISMS規定、標準文書のひな型作成、各課の責任者を集めた社内教育と情報資産の洗い出し、各種運用書式や運用手順の作成。役員に対しPDCAの重要性とISMSの必要性をプレゼンすることや、文書管理のための新システム導入費用を交渉することもありました。

努力して頑張ってISMSを取得したのですが、主任と私は辞めることになります。
理由は2つありました。
1つはやりきったという思い。もう1つは社内教育の際に「これだから女は」と言われたこと。
ISMSに限らず女性軽視の発言は時々ありました。部長には引き止められたのですが、主任も私も勝気な性格だったので、だったら辞めてやろう、となったのです。他社ではどうなのでしょうか。
私はこの時点で社内SEとしてのキャリアを考えられなくなりました。

社内SEをやってみて良かった?答えはyes

社内SEが周りから「ありがとう」と言われることはあまりありません。
システムが正常に稼働するのが当たり前で、不具合があれば指摘されます。もっと悪く言うと社内SEのせいにされることもあります。

報われる仕事だったかと問われると「yes」とは答えにくいです。
ですが、やりがいや達成感はあったかと聞かれるとこちらは「yes」です。
社内のあらゆる情報を管理し、各部署の責任者や部門長と近い立場で仕事ができる。外部パートナーから知識を得られる。組織運営に関わるという点ではやりがいがありました。
年齢の割に大きな裁量を与えられて仕事をしていた、ということについて、表立って言いませんが誇らしく思っています。

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