金融事業会社の社内SEだった男性の体験談

性別
年齢 28歳
社内SE歴 1年

持っている資格
基本情報処理、各種ベンダー資格、証券外務員2種

働いている企業の業種
銀行以外の金融事業会社

はじめに

元々、ブラック企業という言葉は、IT業界全体を指す単語であったかと認識しております。
私は、ブラック企業という単語が使われ始めた時代にネット掲示板やSNS(当時はmixiが全盛期でした)の情報を収集して就職活動を行ってきており、実際にIT業界に就職した為、ブラック企業という単語に対して人一倍語れる知識もあるかなと考えております。
本稿では、IT業界特有の問題を含めて、社内SEの実情を明暗隠さず書いていきます。

IT業界に疲れた転職を目指すエンジニアは、例外なく社内SEを目指す

社内SEは、社内におけるシステムエンジニアの略であり、事業会社のシステムを全て管理する役割を担います。
「事業会社のシステムを全て管理する」という説明では、やや誤解を与えてしまうかもしれません。事業会社のシステムという範疇を超え、社員一人一人に配布される業務用PCの資産管理を含め、「とりあえずITに関係にありそうな業務」を全て担うことになります、と説明した方が実態に即しているかもしれません。

社員の端末管理から、ネットワーク設定、サーバ設定、資材調達のような業務が大半であり、一般的なシステム構築である『要件定義』->『設計』->『製造』->『テスト』といったシステム構築を自らの手を動かして携わることは、ほとんどありません。
何故ならば、大企業であっても、社内SE部署は少人数で業務が回っていることがほとんどあり、システム構築はベンダー(外部業者)に丸投げをしているからです。「その為」といっては語弊を与えるかもしれませんが、社内SEでは、特定の深い知識を求められることはなく、ITリテラシーが低い社員からの要望を全て受け止めることが出来る広いITスキルと包容力が必要になってきます。

社内SE以外の、大半の”一般的な”システムエンジニアは、社内SEの業務とは全く異なり、深いスキル、知見を基にユーザーが望むシステムを構築しなければなりません。常に見積もりである人月と呼ばれる工数との勝負であり、ユーザーからの要件変更とスケジュールで精神的・肉体的なプレッシャーに常にさらされています。
その為、IT業界にどっぷり浸かってしまい疲弊したシステムエンジニアは、必然的にそのスキルを活かすことの出来る他業界への転職を望むことになります。

しかし、転職市場では、第二新卒・ポテンシャル採用以外に、未経験である業界・業種にポジションを維持したまま転職することが出来ません。第二新卒・ポテンシャル採用は28歳が限度であることを考えると、ある程度のシステム構築経験をしたシステムエンジニアは、システムに関係のある業種にしか転職出来なくなります。

しかし、転職を希望しているシステムエンジニアは、とても大きな壁がすぐに目の前に立ちはだかることに気が付きます。SIer業界以外でエンジニア経験を求めている=社内SEとしての募集であり、募集人数が圧倒的に少ないのです。

転職市場では、供給過多であり、最難関

私の知人で、SIer業界で活躍しているシステムエンジニアでも社内SEへ転職出来た人はいません。一方で、システムエンジニア経験がなくても、同業界での業務経験があった人が社内SE枠として転職した例を何件か知っています。

つまり、社内SEは、特別なITスキルを求められておらず、むしろ同業界の業務経験を求めているのです(大企業が、経理部・広報部・営業部等と同列にシステム部を保有しており、広報部からシステム部へ異動する例が考えられることから、LinuxコマンドやSQLコマンドに熟知していることが優先されないことは明らかですよね)。
現に、私はメガバンク系列のシステムエンジニアとして4.5年間の経歴がありましたが、社内SEとして企業へ応募する前に、転職エージェントによるフィルタリングで書類選考落ちしてしまいました。
とにもかくにも、社内SEは、中途で入社するには非常に難関なのです。

社内SEは、実際に何をしてるのか

中途による転職枠が非常に狭いということは、裏を返せば、ブラック企業のような環境とは程遠いということになります。後述しますが、現に私はクライアントがいない環境で、スケジュール概念が特になく、レビューが緩い成果物を制作する毎日を過ごしていました。

私は、出向という形で、銀行ではない金融系事業会社の社内SEとして1年間業務に携わってきました。

システム関連スキルを買われたというより、ITに疎い事業会社における人手不足を補う形であったかのように思えます。実際に、現場で与えられた仕事は、以下の通りでした。

  • 職場における執務室拡大によるネットワーク拡大設定をする業者との調整
  • 利用端末の棚卸
  • 利用端末のセキュリティ設定
  • 管理権限のID/PW発行
  • 社員からの端末不具合窓口
  • ・WEBサイト更新
  • 小さなシステム開発案件の管理、その他業務

特にITスキルを活用するような業務でもありませんでした。
しかし、昨今の業務で、ITが絡んでいない業務は皆無である為、他部門の社員がこれ見よがしに業務依頼をたくさん放り投げてくるような状況であり、依頼を全て受けていると、すぐに耐えきれない程の業務量になってしまいました。
業務を断ることに汗を流した覚えがあります。
業務を断ることが出来るのも、絶対に服従しないクライアントを持たない社内SE社員だから出来る芸当であるのであって、今考えると非常に恵まれた環境でした。

社内SEは、システム構築に携わらないのか?

あくまで私の例であり、一概に一言で説明出来る訳はありませんが、システム構築の”現場(設計、製造)”に携わることは無いと言っても良いかもしれません。
これは、ダイレクトに人件費と関わってくる話なのです。

考え方としては、社内SEは今後も永続的に企業の社員として定着することを考慮すると固定費という扱いになり、ベンダーはプロジェクト目的達成の為に一時的に収集されるといった意味で変動費という扱いになることに由来します。

人月という工数を積んで構築されるシステムプロジェクトは、プロジェクト内の各フェーズによっても人月の重み(Aフェーズは5人月,Bフェーズは10人月 等)が異なる為、社内SEを外部から採用してプロジェクトに携わらせることは、企業の経営面からすると非常にリスクが高いのです。
システムがリリースされ、プロジェクトが完了した後も固定費である社内SEを企業は雇い続けなければなりませんし、プロジェクトというものは、発生しないときは全く発生しないからです。

その為、社内SEは、システムプロジェクトに”現場”であり”実働部隊”であるベンダーを管理する役割を主に担うことになります。
また、システム構築では、”要件定義”という「そもそもどのようなシステムを構築するのか」といった要件を、最初に定義しなければなりません。この要件定義を行う上で、システム構築を発注する社員は業務を正しく理解しており、さらにシステムエンジニアへ認識相違なく伝える必要があります。まさしく、この業務こそが社内SEに求められる業務になります。そして、実際に私は、上記の役割を求められました。

ベンダー管理・要件定義の他に

要件定義後、ベンダーにシステム製造をお願いした後は、勿論システムを納品されることになります。自身の経験となり恐縮ですが、社内SEの活躍の場は、システム納品の後にもあるかと考えております。以下2業務を社内SEは担うことになります。

  • システム検証(納品されたシステムに不具合がないことを確認)
  • システム利用方法の周知(社内向けに業務マニュアル作成)

システム検証

該当システムの業務サポート範囲にも依存しますが、事業会社に納品されるシステムを利用する部署は多岐に渡ることが多いです。システムの本導入後に、致命的なバグが存在した場合、本来の業務が停止してしまうというリスクが発現します。その為、社内SEは、システム発注側として受け入れテストと呼ばれるテストを実施し、納品されたシステムを検収し「問題なく納品されたことを認めます」という印鑑を押す必要がります。

システム利用方法の周知

社員は、事業会社ではシステムに関する知見が豊富な人があまりいないことが一般的です。その為、ログイン方法から機能利用方法まで、システム利用に関わる手順書を作成する必要があります。
こちらも自身の経験で恐縮ですが、私は、システムの各画面のキャプチャを全て取得し、Excelに貼付すると共に吹き出しオブジェクトとコメントを逐一残すことで、膨大な手順書を作成しました。
しかし、手順書を一度作成してしまうと、システム更新に合わせて手順書も修正する必要がある為、バージョン管理というゴールが見えないタスクを担うことになってしまい、非常に大変でした。

まとめ

いかがでしたでしょうか。これまでの要点をまとめると以下のようになります。

  • 中途採用で社内SEになるのは、非常に困難
  • 一方で、従わなければならないクライアントがいない為、比較的ホワイトな環境
  • 社内SEは、ITに関係のある全ての業務を担う「何でも屋」
  • システム開発プロジェクトでは、管理・要件定義・検証を担う
  • システム導入後は、手順書作成等のメンテナンスに追われる

この記事をご覧になっている方は、SIerに所属しているシステムエンジニアの方が多いと考えています。今後、システム開発の現場から離れ、事業会社に社内SEとして入社し、システムとは全く関係のない営業や広報、会計といった部署を経験したいのであれば、是非社内SEを目指されることをお勧めします。

一方で、今後腰を据えてシステム開発を極めたい!といった方に対しては、上述の社内SEの特徴から、社内SEを目指されることはあまりお勧めしません。

社内SEという定義は、事業会社がある意味勝手に定義付けをしているのみであり、「~~だから社内SE」といった堅い意味を持たない、いわゆる概念みたいな位置付けになります。
その為、企業が変われば、社内SEとして求められる役割も変わるといった、千差万別な単語でもあります。
こちらを意識した上で、社内SEの実情を自ら調査してみてはいかがでしょうか。

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