自治体外郭団体の社内SEだった男性の体験談

性別
年齢 45歳
社内SE歴 3年

持っている資格
ITパスポート
.commaster Advance ダブルスター
MOS Excel2013エキスパート

働いている企業の業種
公益財団法人(自治体の外郭団体)

社内SEになった経緯

2012年~2014年までの3年間、首都圏のとある自治体の外郭団体である公益財団法人で社内SEとして3年間勤務していました。
雇用形態は有期契約職員です。

前任者が契約期間満了で退職することに伴い、後任を募集する求人案件を目にし、応募したのがきっかけで採用され、3年間の契約で社内SEとして業務を行いました。
前任者の退職が2012年の3月。そして私の入社が2012年4月。
つまり、直接の業務引き継ぎなど何もなく、入社時に渡されたのは「業務引継書」と書かれた厚さ1cm弱のファイル1冊だけでした。

この法人の人員は少数の正規職員と多くの有期契約職員で構成されており、有期契約職員はほとんどが3年で契約満了です。どの職種にも共通していますが、有期契約社員同士の業務の引継はこのように書面だけで済ませ、直接の引継はありません。

予算の関係上、年度途中の人員増減がほぼ不可能な硬直した組織なのです。仮に年度途中で人員が退職したとしても補充はありません。
かといって正規職員が業務内容を把握しているわけではなく、多くが自治体からの天下りもしくはコネ入社なので有期契約職員の仕事なんてやってられないといった雰囲気を出しています。
このことが後々さまざまな事件や笑い話を生むこととなります。

主な業務内容

この法人における社内SEの業務内容ですが、求人内容には以下のように書かれていました。

◎仕事内容:法人ホームページの管理。外部の委託業者を使いホームページの記事を作成したり改良したりする仕事です。その他ホームページに関する付帯業務もあります。

面接の時は、面接官が70歳近い理事長と60代の副理事が担当しており、仕事内容についてはあまり深く突っ込んで聞くことができませんでした。こちらも「どうせ3年の有期契約だし」と思って軽く考えていました。ところが・・・。
入社して見た業務引継書には以下のように書かれていました。

◎担当業務

  1. 市内25か所の運営施設におけるネットワーク構築と維持管理
  2. 社内LAN環境の維持メンテナンス
  3. 法人ホームページの作成とメンテナンス
  4. ネットワーク機器購入選定及び起案
  5. 施設予約システムの新規導入に関するコンサルティング
  6. 法人内における各種ヘルプデスク業務

・・・全然話違いますよね??
そして前任者の手書きのポストイットには「大変ですが頑張ってください」との書き置き(?)が。
これを見た瞬間逃げ出したくなったのですが、一応確認のため課長(50代)に聞いたところ

課長「何かおかしいところあるのか?」
筆者「ホームページの担当者ということだったと思うのですが・・・」
課長「そうだよ。違う?」
筆者「ネットワーク構築とか機器選定とか予約システムとかって、これは・・・」
課長「ホームページを見るために必要でしょ。予約システムもホームページで使うし」
筆者「・・・」
課長「ホームページについてはまかせてるからよろしくね」

その後も社内の人といろいろ話したのですが、どうやらこの法人ではインターネットも社内LANもNASもシステム構築も社内ヘルプデスクもすべて「ホームページを見るために必要な業務」なのです。
さすが平均年齢50代の組織だけあります。

社内のITリテラシーの低さはある程度覚悟していましたが、さすがにここまでくると笑えないなあと思いながら3年間の「社内SEという便利屋業務」がスタートしました。

webはwordpress、拠点間ネットワークはなし!?

入社してしばらくは社内のweb及びネットワークの環境把握に努めました。
幸い、前職までの知識もあり資格も持っていたためどちらも対応可能な範囲でしたが、この会社のネットワークにはいろいろな意味で驚かされました。

  • 市内25か所の拠点すべてに1つずつNAS設置
  • クラウドストレージは「よく分からないし情報が洩れる」との理由で導入不可
  • VPNなど拠点間のネットワークが構築されておらずデータ共有していない
  • データ共有が必要な時はメール添付かUSBメモリでやり取り
  • 本部には総務部や経理部など計5つの部署があるが、すべての部署に一つずつNASがあり部署間の相互アクセス不可
  • 本部のLAN環境は有線と無線が入り乱れている。パソコンもノートありデスクトップあり機種もメーカーもバラバラ
  • windowsはXPありVistaあり7あり8あり。MSオフィスソフトも2010あり2007あり2003ありバラバラ。メーラーもブラウザもバージョン違い当たり前。
  • ホームページは25サイトあるものの、wordpressのログイン編集権限は社内SEのみ

なぜこんなことになっているのだろうか・・・。
その答えは「指定管理制度」にありました。
施設はすべて公共施設であり、この会社は指定管理制度によって運営を任されているだけの会社です。
つまり、各拠点となる施設に通信インフラを導入する権限がないのです。それが例えVPNだったとしても自治体との予算折衝をするだけのノウハウやスキルを持った人材がいないため、結果的に「何もしないのがベスト」となっているのです。
この「何もしないのがベスト」の精神はこの後も如何なく随所で発揮されます。

Excel方眼紙との格闘

職員の平均年齢50歳以上、天下りやコネが多いという環境は、それはもう驚きの連続でした。前職がITベンチャーだったからなおさらです。社風が180度違う環境はいろいろ勉強になりました。
その中で最も衝撃が大きかったのが、Excel方眼紙の多用です。

役所の人達はあまりwordを使いません。使うのは定款や約款といった平打ち文書作成の時くらいで、ちょっとでも表が入るとExcelを使います。計算要素が皆無でもExcelです。

入社1か月目にして「パソコンに詳しいおにーちゃん」として認識された筆者は、このExcel方眼紙文書のヘルプデスクに駆けずり回る日々を過ごしていました。
Wordpressもネットワークもどこいった!!??という感じです。
誰が作ったかわかりませんが、このExcel方眼紙というやつは厄介です。例えばこの写真の書類、生年月日欄はセルを結合しています。せっかく方眼紙にしているなら入力欄を年月日毎に作ればいいと思うのですが、このせいで

「ここに数字を入れたら全部消えた!どうしたらいい??」

という問い合わせを各拠点から受ける羽目になるのです。
そしてややこしいことにこの書類はデータではなく印刷して提出するもの。

とある管理職「印刷したらページがおかしい」。※(成果、努力した点、反省点など)の欄。
筆者「どんな風に印刷されていますか?」
とある管理職「文字が途中までしか印刷されない」

という事態も引き起こすのです。そりゃ1セルに1000文字も入れてたら特に設定しない限り途中までしか印字されないでしょう。
逆になぜこのテキスト入力箇所のセル結合とテキスト配置設定をしないのか不思議です。
このようなことは日常茶飯事。電話で説明してもわからない時には移動時間を30分かけてその拠点まで行き1分で解決するということもありました。
あ~こうやって無駄な税金が消えていくんだなあと、しみじみ痛感したものです。
他にも

  • 「朝来たらパソコンが立ちあがらない」→USBメモリ刺さったままじゃね?
  • 「会議室でインターネットが見れない」→そこフロア違うから無線届かない場所
  • 「マウスが動かない」→ガラステーブル上の光学マウスで動くならこっちがびっくりだ!
  • 「なんか関数が入っているセルをいじったらデータが壊れた」→元に戻すをクリックすれば?

というような初歩的な問い合わせが連日ありました。多くは年配職員からです。
もちろん、そこの職場には若い職員もいて知識もあるのですが、彼らは「自分の担当ではないので何かアドバイスして変なことになった結果責任追及されても困る。そういうのは社内SEの仕事だ」という意見のためあまりアドバイスしないのです。

何のためのwordpressなのか?

この法人はwordpressでwebを構築しています。固定ページには施設基本情報を掲載し、投稿ページでイベント情報や各種レポートをアップするという、よくある運用でした。
基本的なシステム設計は外部の委託事業者にまかせているのですが、投稿は社内SEの仕事。
とはいえ、具体的に何をやるかと言えば

  1. 各拠点からwordで書いた記事と写真データがメールに添付された状態で送られてきます
  2. そのデータをすべて印刷し、起案書を作り、「この情報をホームページで公開していいですか?」とお伺いを立てます。
  3. 各部署の所属長の承認が得られるまで1週間ほど待ちます
  4. 承認されたらwordpressにログインして記事をアップします
  5. 否決されたら拠点にその旨フィードバックします。たまに誤字1か所だけの原稿を否決されることもあります。

前職の友人に話すと大爆笑されますが、これが役所流危機管理なのです。
ブログの持つ機動性や即時性といった要素を排除し、責任を分散させ物事に対応するのがこの法人の仕事の進め方です。

なお、wordpressへのログイン履歴は、いつ何の目的でログインしたかを月末にまとめて提出する必要があります。もちろんExcel方眼紙を使った一覧表で。

ただし、それだけでは社内SEとしてのプライドが許しません。
SEO対策のために各拠点に記事の書き方をレクチャーして回ったり、サイトの利便性を高めようとPHPいじってブログ内検索を設定したり、新たなカレンダープラグインを導入してイベント情報発信を見やすくしたりという地道な改良を続けました。
ちなみに、ホームページにかけられる予算は年間15万円、うち12万円はレンタルサーバ代です。
・・・年間3万円で何をしろと?

唯一の社内SEらしい仕事といえば

最初の頃は積極的に業務改善提案をしていたものの、暖簾に腕押し状態で何も進まない社風。全員が「何もしないことがベスト」である環境に悟りを開き、おとなしく言われたことだけをやって期間満了することを決めて働いていたのですが、唯一自分からの発案が認められたネットワークエンジニアらしい仕事があります。
それはデータバックアップサーバの新設。

冒頭に説明した通り、5つの部門ごとにNASを持ちデータ共有が進んでいなかった本部内ですが、ある日1台のNASがクラッシュしてデータが全部消えてしまったことに端を発し見直し論が高まりました。
クラウドストレージがダメならせめて全部のNASのバックアップを取っておかないと大変なことになるとの主張が通り、自動でデータバックアップを取る案が採用されました。
年間予算の3万にプラスして2万追加され合計5万の予算でネットワーク設計です。
・・・はぁ。

1対1ならばNASに外付けHDDを直接つなげて可能ですが、5つの部署をバックアップ1台で行うとなると、方法は限られてきます。
ちなみに、この規模の会社なのでもちろんアクティブディレクトリによる管理はしていません。NASへのアクセス権限もNAS単位で設定している状態でした。
となると、力技ですね。
常時電源を入れているパソコンを1台設置してそこに新しく導入したバックアップ用のNASを接続、ソフトウェアで5つの既存のNAS のバックアップを設定し自動化する方法です。
新しいNASはRAID1でミラーリング。予備の予備まで考慮しました。

3年間でこれくらいですかね、SEらしい仕事と言えば・・・。

社内SEとは名ばかりの便利屋

この3年間、実に楽しい体験だったと思います。
公益財団法人は一応民間扱いですが、社風は完全にお役所です。しかも助成金でぬくぬくと維持されているので危機感がない職場です。
社内SEとは名ばかりで、実質はパソコンに詳しい便利屋おにーちゃん。時にはパソコンが得意ならデータ入力も得意だろうと、大量の入力業務をさせられたこともありました。

世の中にはこういう扱いをされる社内SEもいるよってことで皆さんに知っていただければと思い記事にいたしました。
世の社内SEの皆さんの幸多からんことを!

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